どう対処する?加齢黄斑変性の日常生活での悩み

加齢黄斑変性では、「見たいところが見えない」「視野の中心が暗い」「ゆがんで見える」「ぼやけて見える」といった症状が多く現れます。このために日常生活で不便を感じることがあります。

実際に、加齢黄斑変性の患者さんを対象としたアンケート*では、

「まぶしく感じる」
「遠方が見づらく、看板などを読みにくい」
「手元が見づらく、本などを読みにくい」
「信号機の色が判別できない」
「運転がこわい」

などの回答が寄せられました。これらのお悩みを解消するためのヒントをご紹介します。

まぶしく感じるときの対処法

視界やスマホ・パソコンの画面がまぶしくて困る場合は、医療用のフィルターレンズを使った「遮光眼鏡」の使用がおすすめです。遮光眼鏡のレンズはまぶしさの原因となる短波長(青色系)の光をカットし、それ以外の光はできるだけ多く通します。メガネの上からかけられる「オーバーグラス」もあります。

写真 遮光眼鏡の例1)
お手持ちのメガネにクリップで留めて使う「クリップオンタイプ」、メガネの上からかけられる「オーバーグラスタイプ」があります。さらに、ぎらつきも軽減する「偏光眼鏡」もあります。
出典:公益社団法人日本眼科医会webサイト

このレンズにはいくつかの色がありますが、オレンジ系の場合は信号機の色の区別がつきにくかったり、肉や野菜の色見の判断がしにくかったりすることがあります2)。相談しながら自分に合ったものを選びましょう。

ちなみに、一般的なサングラスは予防にはよいのですが、機能性よりもファッション性を重視していたり、光を均一にカットしたりして、加齢黄斑変性のまぶしさ対策には適さないこともあります。

遮光眼鏡の他にも、まぶしさを軽減するグッズには、上からの光を防ぐサンバイザーや帽子、横からの光を防ぐサイドシールドなどがあります2)。組み合わせて活用しましょう。

遠方が見づらいときの対処法

少し離れたところが見えづらく、看板や時刻表、運賃表などが読めなくて困る場合には、「単眼鏡」(図1)が便利です。これは片目で使う小型の望遠鏡のようなもので、持ち運びやすいサイズが売られています。使いこなすのに少し慣れが必要です。

図1 単眼鏡

また、スマホやデジタルカメラで写真を撮って、その画像を手元の画面で拡大して読み取る方法もあります。冒頭で紹介したアンケートでも、スマホの拡大機能を活用しているという声が寄せられました。

ほかには、現金ではなくICカードなどの電子マネーを活用しているという声もありました。残高には注意が必要ですが、切符を買うために毎回運賃表を確認しないで済むようになります。

手元が見づらいときの対処法

加齢黄斑変性では、視野の中心部分が暗くなったり、ゆがんで見えたりします。そのため手元が見づらくなり、本や新聞などを読むのに不便さを感じます。

この対処法としては、まず「文字を拡大する」ことがポイントです。文字が十分に大きければ、視野の一部が欠けていても見つけられますし、読みやすくなります。そのための道具には拡大鏡(ルーペ)や拡大読書器などがあります(図2)。

図2 拡大鏡(ルーペ)[上]と拡大読書器[下]

スマホやパソコンで読む場合は、文字サイズが大きくなるように設定することも可能です。タブレット端末の機種によっては、画面の色を反転させる、読み上げ機能を使う、といったことも可能です。

また、「読む部分を強調する」ことも有効です。タイポスコープ(図3)を使うと、読みたい部分がはっきりします。見やすいところでものを捉える見方(偏心視)をしている場合は、タイポスコープや拡大読書器に視線を固定する目印をつけると、より読みやすくなります。

図3 タイポスコープ

交通信号機が見づらいときの対処法

「信号機の色が判別できない」というお悩みも、加齢黄斑変性の患者さんに多いものです。

テクニックとして、「色の並び方と明るさは決まっているので、位置や自分の見え方を確認しておけば見分けられる」という意見があります3)。横断歩道の歩行者用信号は上が赤、下が青です。また、車道用の信号は左から青・黄・赤の順(縦型の場合は上から赤・黄・青の順)です。覚えておくと便利です。

近年では、信号の色を振動や表示、音声などで判別し歩行をサポートするアプリなどが開発されています4)。近い将来、これらが普及するようになるかもしれません。

自分に合ったグッズの活用でよりよい生活を

日本眼科医会が提供している「ロービジョンケア施設一覧」5)では、医療施設ごとに対応している補助具を一覧にしています。使ってみたい器具がある場合は、こちらで相談することもできます。その際は、必ずかかりつけの眼科医や視能訓練士などの眼科スタッフに相談のうえ、該当の施設に事前に連絡するようにしましょう。

また、視覚障害の身体障害者手帳をお持ちの場合は、見えにくさを改善するための器具の助成が受けられる制度があります。助成の内容はお住まいの地域によって異なりますので、かかりつけの医療機関で相談するか、お住まいの市区町村の窓口にお問い合わせください。

技術の進歩もあり、見えにくい方の生活をサポートするグッズは近年続々と開発されています。自分の生活に取り入れやすいものを活用していきましょう。

監修:福岡歯科大学 准教授 大島裕司先生

*アンケート調査概要

  • 実施責任者:株式会社QLife
  • 調査目的:加齢黄斑変性症に関する患者の理解、情報提供体制や日常生活についての実態を探る
  • 調査手法:Webアンケート調査
  • 調査期間:2020年11月2~6日
  • 調査対象者:QLife会員かつ加齢黄斑変性症の診断・検査を受けた患者
  • 有効回答数:109
  • 日本眼科医会:中高年からのロービジョンケア
    https://www.gankaikai.or.jp/health/47/ [2021年12月1日アクセス]
  • 特定非営利活動法人タートル情報誌「タートル第6号」:三輪まり枝「病院関係者によるロービジョンケアから復職、就労継続への道のり」
    http://www.turtle.gr.jp/joho006.html [2021年12月1日アクセス]
  • 理化学研究所 神戸事業所 網膜再生医療研究開発プロジェクト:これまでの「ロービジョンの集い」おはなし
    http://www.retinastem.jp/menu04_lv-archive.html [2021年12月1日アクセス]
  • 第27回視覚障害リハビリテーション研究発表大会抄録集
    https://www.jarvi.org/pub/wp-content/uploads/2018/12/shikaku-riha-syoroku.pdf [2021年12月1日アクセス]
  • 公益社団法人日本眼科医会:ロービジョンケア施設一覧
    https://www.gankaikai.or.jp/lowvision/shisetu/ [2021年12月1日アクセス]

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