加齢黄斑変性の患者さんをサポートするには?

家族や知り合いが加齢黄斑変性になったら、どう接したり、支援したりすればいいのでしょうか。加齢黄斑変性という病気は一般的によく知られておらず、知識の足りなさから患者さんを傷つけてしまうこともありえます。

ここでは、加齢黄斑変性の患者さんと接する際の注意点や、どんなサポートが望ましいかを解説します。

加齢黄斑変性について知る

まず、加齢黄斑変性の情報を収集し、知ることが大事です。症状を過小に評価することも過大に評価することも、患者さんにとってマイナスになります。

過小評価の例としては、加齢黄斑変性の症状を下記のように断じてしまうことです1)

「年のせいでしょ」
「気のせいじゃないの」

病名に「加齢」とついていますが、誰にでも起きる老化現象の一種ではなく、れっきとした目の病気です。

患者さんは不安ですから、周囲に「年のせい」「気のせい」などと言われると、そう思い込みたくなるかもしれませんし、治療に取り組む意欲が低下してしまうかもしれません1)。しかし、加齢黄斑変性はきちんと治療して進行を抑えるべき病気です。周囲の何気ない発言で治療を遠ざけないようにしましょう。

一方、過大評価も患者さんを苦しめる原因となります。加齢黄斑変性は「視野の中心が暗い」「ゆがんで見える」のが主な症状であり、光を完全に失っているわけではありません。それを理解せずに、単純に「見えないのだ」と思って接すると、こんな誤解につながります2)

「ふだん、目が見えないと言いながら、普通に歩いている」
「すれ違っても挨拶をしない」

これらの誤解を避けるためにも、加齢黄斑変性とはどういう病気なのか、どのようなことで困るかを知っておきましょう。

加齢黄斑変性の患者さんへのサポート

加齢黄斑変性の患者さんに対し、どのようにサポートするのがよいのでしょうか。具体例をいくつかご紹介します。

①受診・外出のサポート1)

加齢黄斑変性は、診断や治療、経過観察のために定期的に眼科に通う必要があります。そのときに送り迎えや付き添いをすると患者さんも安心です。

なぜかというと、検査や治療の後は目が見えにくい状態になることがあるからです。目の奥(眼底)を検査するときに使う薬(散瞳薬)の影響でまぶしい状態がしばらく続いたり、目に注射を打った後に眼帯を着ける場合もあります。この状態で自ら車などを運転して帰るのはとても危険です。

また、身体の不調などにより、自力で病院に行くのが困難な人もいらっしゃいます。そのことが理由で通院が途切れてしまわないよう、サポートしてあげてください。

受診を含む外出時には、さりげなく手を引いてあげたり、段差があることを教えてあげたり、手すりに誘導したり、信号機の色を伝えたりするような気遣いが、見え方に不安のある人にとって心強いサポートになります。

②生活改善のサポート

加齢黄斑変性は、喫煙や過度な日光を浴びること、食生活の偏りがリスクになります3)。これらを避けることが予防や症状の進行を防ぐことにもつながりますので、家族や周囲の人も協力しましょう。

なかでも禁煙は症状の進行を遅らせるためにも非常に重要です3)。禁煙は周囲の人のサポート体制があると続けやすくなります。喫煙具やたばこが吸いたくなる場所など、喫煙のきっかけから患者を遠ざけたり、禁煙が続いていたら褒めたりして、後押ししましょう4)
また、食生活改善や運動を一緒にするなども、よいサポートになります。

③読み書きのサポート

加齢黄斑変性になると手元が見にくくなり、本や新聞などの文字が読みづらくなります。読む以外の方法をとるという手段もありますが、読み書きをサポートする、さまざまなグッズがあります。それらを活用することで、読むことをあきらめずに済みます。

特にスマホは、加齢黄斑変性の患者さんにとって、文字を読むときや外出するときなどに非常に頼りになるものです。スマホの操作に不慣れな方には、使い方(写真撮影や画面の拡大、文字サイズの設定方法など)を教えてあげましょう。

なかには、「読み書きにより目を酷使すると病気が悪くなる」と思い込んでいる方がいます2)。しかし、読み書きで加齢黄斑変性が悪くなることはありません。読み書きが続けられるよう、患者さんをサポートしましょう。

④本人を見守る

日頃からさりげなく本人を見守るということも、とても大きなサポートになります。 実際の見え方は本人にしかわかりませんが、周囲からよく観察していると「見づらそうにしているな」とか「以前と比べてこんな変化があるな」ということに気づくことができます1)

本人は心配をかけたくないあまりに、不便なことがあっても我慢しているかもしれません。 「何か困ったことがあったら言ってね」「してほしいことはない?」などと声かけをして、本人がサポートをお願いしやすい関係性を作っておきましょう。


監修:武蔵野眼科 山本亜希子先生

  • 飯田知弘ほか監修:別冊NHKきょうの健康, NHK出版, 東京, pp.94-95, 2018
  • 森隆三郎:高齢者と加齢黄斑変性. 日老医誌, 2014, 51, 330-335
  • 飯田知弘ほか監修:別冊NHKきょうの健康, NHK出版, 東京, pp.74-75, 2018
  • 厚生労働省:禁煙支援マニュアル(第二版). p39 https://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/kin-en-sien/manual2/dl/addition01.pdf [2021年12月1日アクセス]

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