ロービジョンケアグッズに込められた思い~より多くの人に、喜んで使ってもらえる製品を届けるために~

サポートギアブランドGRUS(グルス)を立ち上げ、ロービジョンケアグッズの開発を手掛ける河田哲哉さんへのインタビュー、後編では開発にあたっての心掛けや今後の展望について伺います。

河田哲哉(かわだ てつや)さん
株式会社インテック代表取締役社長
2014年にサポートギアのオリジナルブランドGRUS(グルス)を立ち上げる。以降、ボイス電波腕時計、ボイスクッキングスケールなどの視覚障がい者向けの製品のほか、ヒートショックセンサーや熱中症計といった「より多くの人々が健康で健やかな生活を送れるように」をコンセプトにした製品を開発・発売している。

――前回のお話で、「求められているものを作る」というお言葉が印象的でした。具体的には、どのようにしてニーズを探っていらっしゃるのですか。

日本ライトハウスさん、日本点字図書館さん、日本視覚障害者団体連合さんをはじめ、弊社の製品を販売していただいている社会福祉法人さんを通し、購入者の感想やご意見、開発にあたってのアドバイスをいただくほか、展示会にご来場いただいた当事者の方やヘルパーさんのご協力で開発座談会なども開催しています。

――大勢の方から情報を収集されているのですね。

なるべくいろいろな方のお話を伺うようにしています。視覚障がいといっても、目が不自由になった時期も程度もそれぞれです。見えない方にとっては不要な機能でも、見えにくい方には「欲しい」ということがあります。実際、ボイスクッキングスケール(前編参照)の配色は、弱視者の方からの声を伺わなければ得られない発想でした。

――そうすると、さまざまな要望が出てくると思うのですが、そこからどのようにデザインや機能を決定されるのでしょうか。

ご要望を全て取り入れると機能が複雑になって、かえって使いづらいという方も出てくるので、全体を見ながら絞り込んでいきます。例えば、腕時計にアラームを付けて欲しいというリクエストもいただくのですが、一方でアラームの設定が難しいという方も大勢いらっしゃいます。「より多くの人に使って喜んでもらえるもの」という原点を忘れず、誰もが比較的簡単に使えるものを作ろうと考えています。

■視覚障がい者と作った製品の例

①弱視の方の声から生まれたロービジョンウォッチ

弱視の方の「スピーカーが付いた腕時計は大きいので、薄型で見やすい時計が欲しい」という声から生まれた腕時計。針を太くして短針と長針の差も明確にした。文字盤のデザインはリクエストの多かった6種類、それぞれにメンズ・レディースサイズを揃え、好みに合わせて選んでもらえるようにしている。

レディースサイズを着用したところ。
着脱が簡単に行えるバタフライバックルを採用。
②3年近くかけて使いやすさを追究したボイスタイマー

画面が見えなくても使えるよう、経過タイムを音声で教えてくれるアナウンス機能、設定時間まであと何分かを教えてくれる予告音機能を搭載。防水防滴(IPX4)で、料理、学習、入浴など、さまざまなシーンで活用できる。簡単な使い方の音声説明も搭載している。

電池は、わかりやすいように単4電池1本。蓋は、取れないように本体と一体化している。
背面は強力磁石で吸着できるようになっている。

――現在はどのようなリクエストがありますか。

コロナ禍ということもあって、「見やすい非接触体温計が欲しい」というリクエストを多くいただいています。ただ、医療機器認証番号の取得が必要であるため、弊社のような小所帯の会社にはハードルが高いのが現状で、これからの課題です。未認証の製品も多く流通していますが、弊社としては「信頼していただける製品を長期にわたって提供し続ける」ということを第一に考えています。

――今後の展望についてお聞かせください。

サポートギアの開発・販売を始めようとしたとき、「この業界に入ったからには、長くやり続けることが大事だ」という言葉をいろいろな方からいただきました。ユーザーにとって、製造元が数年で撤退して修理できないという事態は困る、という意味です。ですから何としても長く続けます。
ただ、そもそも販売数は限られていますし価格も低く抑えているので、ビジネスとして継続するためには、もっと弊社の製品を知っていただき、使っていただくことが必要です。その戦略のひとつとして海外展開を考えており、現在、東京都中小企業振興公社から海外展開プラン策定支援を受けているところです。日本でこれだけニーズがあるということは、海外でも困っている方が多いはずなので、そこに貢献できたらと思っています。

――最後に、サイト読者の方へのメッセージをお願いします。

視覚障がいがある方にも生き生きとした生活を楽しんでいただきたい――私たちはそう思って製品を開発しています。そのときに大きな力になるのが当事者の方の声です。年をとったから、あるいは病気だからしょうがない、とあきらめてしまわず、「こういうことで困っている」「こういう製品が欲しい」という声をぜひいただけたらと思っています。

★インテック社へのリクエストやご相談がありましたら、下記までご連絡ください。

TEL:0120-505-857(平日10:00~17:00)
メールアドレス:support@grus.tokyo
GRUS公式webサイト:http://grus.tokyo
商品は公式オンラインショップhttps://shop.grus.tokyo ほかAmazon、楽天などで取り扱いがあります。

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