加齢黄斑変性*の治療は、2004年に光線力学療法(PDT)、2008年には抗VEGF療法が登場したことで、選択肢が広がりました。一方で、治療の継続による負担に不安を感じる方も多いと思います。
この記事では、加齢黄斑変性で民間保険の給付金を受け取ることができるケースについて解説します。
*加齢黄斑変性には滲出型と萎縮型がありますが、萎縮型加齢黄斑変性については、現時点で有効な治療がありません。従いましてこちらの記事では、治療対象となる「滲出型加齢黄斑変性」について解説します。
加齢黄斑変性の治療方法
加齢黄斑変性に対する治療方法には、硝子体に薬を注射する「抗VEGF療法」のほか、レーザー光を使用する「レーザー光凝固術」や「光線力学療法(PDT)」、そのほか維持療法として手術(硝子体切除術など)などがあり、症状や担当医との相談により決定されます。
これらの治療方法は公的医療保険が適用されるため、所得や年齢に応じた自己負担割合(1~3割)で治療を受けられます。さらに、民間の医療保険から給付金が支払われる場合があります。なお公的医療保険の仕組みについては、下記のリンク先をご覧ください。
民間の医療保険から給付金を受け取れるケース
「加齢黄斑変性」の治療を受けた際に民間の医療保険から給付金を受け取るためには、「医療保険」や「医療保険特約」(生命保険などほかの保険に付帯する保険)に加入している必要があります。また医療保険・医療保険特約に加入していたとしても、約款に規定されていなければ、給付金を受け取れません。都道府県民共済・JA共済や公務員が加入する共済組合なども同様で、あらかじめ給付金の対象は決まっています。
民間の医療保険では、一般的に次のような区分があります。
・入院(日帰り入院を含む)・・・入院給付金
・手術(外来手術を含む)・・・手術給付金
入院をしなければ入院給付金は給付されませんし、手術給付金を受け取るためには対象となる手術を受けている必要があります。眼科の場合、入院して手術するケースもありますが、多くは外来手術です。「入院手術」と「外来手術」とで給付金額が異なる保険会社も多いので、注意が必要です。
次のようなタイプも確認しておく必要があります。
・日額タイプ・・・入院給付金・手術給付金
・一時金タイプ・・・入院給付金のみ
ただし、特約を付帯する場合を除く
医療保険には、大きく「日額タイプ」と「一時金タイプ」があります。日額タイプはあらかじめ日額5,000円などの給付金額を決め、入院日数に応じて給付金が支払われるタイプです。たとえば日額5,000円で入院日数が5日であれば、25,000円(5,000円×5日)が支払われます。また手術給付金は「入院手術10万円・外来手術5万円」※のようにあらかじめ金額が決まっています。
一方、一時金タイプは、入院日数に関わらず10万円や20万円など一時金が支払われるタイプで、手術給付金特約など特約を付帯していなければ、手術給付金は支払われません。
※ 手術給付金は「日額×倍率」で給付され、倍率は手術の種類に応じて決められています。たとえば倍率10倍の手術であれば、50,000円(5,000円×10)受け取れます。手術の種類にかかわらず倍率を10倍としている保険会社や、手術の種類に応じて40倍や10倍など倍率に差を設けている保険会社があります。
民間の医療保険を活用する際に注意すべきこと
民間の医療保険に加入しており手術を受けた場合でも、保険金の給付を受けるには、その手術が給付の対象になっている必要があります。保険会社によっては、公式サイトに給付の対象かどうか検索できるツールが用意されており、手術給付金の対象かどうかを調べることができます。一般的な民間の医療保険における対応は次のようになります。
<一般的な手術給付金の対象の条件>
① 両目の手術を受ける場合、手術日が異なればそれぞれ給付されるが、同日に手術した場合の給付は1回のみとなる
② レーザー光による手術には、「〇日に1回」という制限が設けられている(日数は各保険による)
③ ①②に関連して、たとえば左目の手術を受けた1週間後に右目の手術を受けた場合は、異なる部位となるため、それぞれ給付される
硝子体注射は手術給付金の対象となるか?
「硝子体注射」の分類は手術ではないため、一般的には手術給付金の対象とはなりません。ただし、数は少ないですが2021年12月1日現在「硝子体注射」も手術給付金の対象となっている保険もあるようです。また、加入のタイミングにもよっても変わりますので医療保険の対象となるかどうかについては、ご自身で判断せず、必ず保険会社にご確認ください。
なお検索ツールを利用する際の注意点として、たとえば「レーザー光凝固術」の場合、医療機関では単に「レーザー治療」と記載したり、呼んだりしたりしていることもあります。一方、保険会社の検索ツールでは、一般的に「網膜光凝固術」で検索しないと検索結果は表示されませんので、注意が必要です。この点を含め、不明な点は保険会社に直接問い合わせることをお勧めします。
給付金手続きの注意点
保険会社に給付金を請求する際の必要書類のひとつとして、保険会社所定の「診断書」があります。保険会社によっては、医療機関所定の診断書や、ほかの保険会社所定の診断書コピーでも対応しています。いずれの場合でも診断書は担当医に書いてもらう必要があります。
また保険会社では、手術が給付金の対象になっているかどうか、医療保険加入前に発症していないかなどを確認・調査します。加入前に発症していたにもかかわらず、告知しなかった場合や虚偽の告知をした場合は、告知義務違反となることがあります。ちなみに告知事項に該当しない内容(聞かれていない内容)については告知する必要はありません。
なお診断書を取得する際の費用は自己負担となります。診断書費用を負担し、保険会社に請求したものの給付の対象外となった場合のみ、診断書取得費用として一定額が支払われる保険会社もあります。また給付金請求には、請求できる日から時効が設けられているのが一般的ですので、請求漏れがないよう注意しましょう。
民間の医療保険を活用する場合には前もって確認を
民間の医療保険には公的医療保険を補完する役割があり、基本的に公的医療保険の対象であれば民間の医療保険も給付の対象となります。しかしこの記事で解説してきたように、公的医療保険の対象であっても、民間の医療保険では限度額や限度回数が設けられていたり、給付金の対象外となっていたりすることがあります。
予定している入院や手術などが給付金の対象かどうかは、あらかじめ保険会社に確認しておくとよいでしょう。
監修:FPオフィスベストライフ代表 CFP® 藤孝憲氏
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