加齢黄斑変性も対象に 障害者総合支援法とは?(後編)

障害者総合支援法で規定されているサービスのひとつに「日常生活用具の給付」があります。今回は、このサービスを受ける際の手続きについて、実際に利用された方の体験談も交えてご紹介します。

サービス対象となる方

現在、障害者総合支援法のサービス対象は加齢黄斑変性を含む366疾病となっています。対象となる方は、障害者手帳をお持ちでなくても、必要と認められた支援が受けられると定められています。サービスの利用を申請する際は、お住まいの市区町村の担当窓口に加齢黄斑変性の罹患が証明できるもの(診断書など)を持参するようにしましょう。障害支援区分の認定や支給決定などの手続き後、必要と認められたサービスを利用できます。
ただし、比較的新しい制度のためか、手続きに関わる方でもあまり詳しくないケースもあるようです。厚生労働省作成の「障害者総合支援法と対象となる難病が追加されます」リーフレット1)と「障害者総合支援法の対象疾病の見直しについて2)をお持ちになって相談すると安心です。「障害者総合支援法の対象疾病の見直しについて」では対象となる366疾患がリストになっており、2022年10月現在、加齢黄斑変性はその58番目に記載がされています。なお、制度は変更になる場合がありますので、相談前に厚生労働省ホームページにて最新情報を確認するようにしましょう。

障害者総合支援法の対象となる難病が追加されます 出典:「障害者総合支援法の対象となる難病が追加されます」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/000847375.pdf)[2022年10月3日アクセス]

日常生活用具の給付とは

日常生活用具とは在宅で生活している障害のある方が、日常生活を容易にするために使用するものです。
視覚障害に関して支給される主な用具としては、電磁調理器、点字器、視覚障害者用ポータブルレコーダー、視覚障害者用活字文書読み上げ装置、視覚障害者用読書器(拡大読書器、音声読書器)、視覚障害者用時計などがありますが、お住まいの自治体(市区町村)によって、支給される品目や給付費の上限額などが異なります。また、障害の種別や程度、年齢によっても給付される用具が異なります。詳しくはお住まいの自治体の担当窓口にお問い合わせください。

支給手続き

支給の手続きの流れは、市区町村によって異なりますが、一般的には以下のようになっています。

日常生活用具の給付を受ける際の手続き(例)

日常生活用具給付等事業事務の流れ(償還払いの場合の例示)
資料:国立障害者リハビリテーションセンター 自立支援局 別府重度障害者センター「在宅生活ハンドブックNo.1(補装具・日常生活用具等の申請手続き)」(http://www.rehab.go.jp/beppu/book/livinghome.html)より
  1. 利用者(あなた)が市区町村窓口に日常生活用具給付を申請します。
    市区町村窓口で申請に必要な書類を受け取り、必要事項を記入して申請を行います。
    *一般的に、申請したい製品のカタログと見積書が必要となります。
    *医師の意見書などが求められる場合もあります。
  2. 市区町村が必要な調査等を行い、適当であると認められた場合は、利用者(申請者)に対して日常生活用具給付券が交付されます。
  3. 市区町村が、業者に日常生活用具給付を委託します。
  4. 利用者が、給付券を業者に提示し、日常生活用具の納品を依頼します。
  5. 業者と利用者が契約を結びます。
  6. 業者が日用生活用具を納品します。
  7. 利用者が業者に費用を支払います。
  8. 利用者は、支払った費用のうち公費での負担分を市区町村に請求します。
  9. 市区町村は利用者に、公費負担分を支払います。

自己負担額

原則として、日用生活用具の価格の1割が自己負担になりますが、世帯の所得に応じて利用者負担に上限額が設定されます。

《体験談》障害者総合支援法を利用して拡大読書器を取得

加齢黄斑変性友の会会員 Kさん(80歳代、障害者手帳非所持)

 加齢黄斑変性で視力が落ちたため、小さな文字が見づらくて困っていたところ、障害者総合支援法を利用して拡大読書器を取得できるかもしれないという情報を得たので、申請してみることにしました。
 2021年11月、まずは眼鏡店に行って実際に読書器を体験。支援について相談したところ、大変親切に教えてくださり、見積書をいただきました。
 その後、行政窓口に出向いて相談し、本人用申請書と医師の意見書の書類をもらってきました。
この意見書が「障害者手帳受給者用」となっていたため、病院の先生に、この書式では加齢黄斑変性に関する意見書は書けないと言われてしまったのですが、加齢黄斑変性も障害者総合支援法の対象疾患であることをお話し、見合う書式であれば書いていただけることになりました。
 そこで、加齢黄斑変性の患者が申請できる書式が欲しいと行政窓口に電話したところ、「この書式しかないので、これを利用してほしい」とのこと。その際、行政の担当者の方が病院に電話して説明して下さり、おかげでスムーズに意見書を書いていただけることになりました。行政も病院もとても親切で、ありがたかったです。
 その後、医師の意見書と、眼鏡店で作成してもらった拡大読書器の見積書、本人の申請書をそろえて行政に提出しました。
申請から約2か月半後の2022年2月16日に、待望の日常生活用具給付券が行政から届いたので、眼鏡店に連絡し、ほどなくして拡大読書器を入手することができました。
 拡大読書器は本当に便利です。今まで新聞は見出しぐらいしか読めずに諦めていたのですが、読書器を使うと詳細まで楽に読めます。生協の注文冊子の小さな文字も見えるようになって、間違いなく発注できるようになりました。また、今まで針に糸を通すことが難しくて敬遠しがちだったお裁縫も楽しめています。生活に便利な道具を使うことで、好きなことが続けられるのだなぁと実感しています。
 今回、病院の先生も行政の担当の方にもとてもよく対応してくださいましたけれども、一方で、障害者総合支援法という法律が、医師にも行政にも案外知られていないのだなということも実感しました。とてもありがたい制度なのでもっと広まってほしいですし、そのためにも、サービスを受ける側も自分で勉強することが必要だと感じています。

医療機関からのアドバイス

  • 意見書には、日常生活に困難があり、用具の使用によりそれが軽減することを記載します。給付をご希望の際は、困っていることを具体的にお知らせいただくとよいと思います。
  • 障害福祉サービスは障害者自立支援法の規定に基づいて各自治体が行う事業なので、厚生労働省の示す指針が必ずしもそのまま全国一律に運用されるとは限りません。例えば、医師の意見書の書式も自治体によって異なりますし、支給するかどうかの判断も異なります。制度を検討される際には、お住まいの自治体にご確認ください。
  • 意見書を提出した後、個々の身体状況に応じた必要性を判定された結果、市区町村からの補助具費等の支給が認められない場合もありますので、あらかじめご理解をいただく必要がございます。

(井上眼科病院 鶴岡三惠子先生)

  • 厚生労働省:厚生労働省ホームページ「障害者総合支援法の対象となる難病が追加されます」
    https://www.mhlw.go.jp/content/000847375.pdf[2022年10月3日アクセス]
  • 厚生労働省:厚生労働省ホームページ「障害者総合支援法の対象疾病の見直しについて」
    https://www.mhlw.go.jp/content/000847376.pdf[2022年10月3日アクセス]

無料会員登録をすると
以下の機能をご利用いただけます

  • 通院の記録と調子の記録
  • 質問と回答の閲覧・投稿
  • 体験談の閲覧・投稿

質問・体験談でほかの患者さんと情報交換できる!
登録はかんたん!2ステップ。1分で完了します。

その他の記事

視覚障害がある方向けのスマホ活用ガイド アクセシビリティ機能...

注射の恐怖を乗り越えるには

視覚障害者のホーム転落事故を防ぐ取り組み~国を挙げてホームド...