お化粧は、社会参加するための武器になる(前編)~「ブラインドメイク」の実践~

提供:ノバルティス ファーマ株式会社

視覚障害者に向けた「ブラインドメイク・プログラム」を開発し、当事者が自身でフルメイクできる「ブラインドメイク」を指導している大石華法さん。立ち上げからのお話をうかがいました。

たった5分のメイクで人は変わる

大石さんがこの仕事を始めることになったきっかけは、伯母様。美容師としていつもおしゃれだった人が、認知症になって入った病院では刈り上げにされていたことに驚いたそうです。
「そういう時代だったのだと思いますが、正直ショックでした。あんなにきれいな人がって。2005年に伯母が亡くなったとき、病院に入ってもおしゃれをあきらめずにいるために、自分にも何かできないかと考えました」
そして、一念発起して理容師になった大石さん。ある時、統合失調症などの障害を持つ人が社会参加できるように、施設で化粧指導をしてほしいという依頼が舞い込みました。
「最初は恥ずかしがってキャーキャー逃げ回ったりしていましたが、『どの色が好き?』とか『口紅だけ塗ってみる?』なんて言っているうちに、みるみる表情が変わって。もう、鏡を離さなくなるんです。たった5分のメイクで、人が変わるのを目の当たりにしました」
その中には、視覚障害を持つ人もいました。これが、大石さんのブラインドメイクのスタートになりました。

「娘がうれしそう」と感謝の電話がきた

視覚障害のある人も、メイクをすると表情やしぐさなどが変化し、「見えない人が化粧をするの?」という当初の疑問は一気に払拭されました。そして、同行援護のボランティアで視覚障害者とコミュニケーションする中で、メイクやおしゃれの大切さを改めて実感しました。
「わたしが理容師だと言うと毛染めの話になったり、『ここに白髪あるよ』と言うと『えー、似合う毛染めの色を見てほしい』と言われたり。私みたいに外見のことを言う人がいなかったんでしょうね。『チークが左右対称じゃないよ』と言うと『どうやるの?』とか、とにかくお化粧についての『知りたい』『教えて』が多かったんです」
そこで2010年に「ブラインドメイク」のホームページを開設すると、予想以上の勢いでアクセスがありました。大石さんの元には、視覚障害のある女性たちが次々とやってきました。
「ご家族の方は、『見えないのに化粧しても…』という感じだったみたいなんですが、ご本人が帰宅するとすごくきれいになっていて、そのうえウキウキと喜んでいるそうなんです。お父様から『娘がうれしそうで』と感謝の電話が来たりしました」

指先の感覚がすぐれていて、指を扱うことに慣れている

当初は、大石さんが化粧を施すサービスでした。しかし、当事者の方の「自分でやりたい」という一言に刺激を受け、大石さんは視覚障害者が自分の指でメイクする「ブラインドメイク・プログラム」を開発します。
「プロのメイクさんも、最終的には指で肌になじませるでしょ。だから、指でメイクするのは理にかなっているんです。アイシャドウやチークを指につける量を把握して、両手で左右対称に動かせばバランスはとれます。できるようになるまでトレーニングしますから」
指先の感覚が優れていて、指を使うことに慣れているので、マスターするのも早いと言います。
「指先を使って小さな点字を読んだり、日ごろから指先の感覚を研ぎ澄ませているので、触った肌の感触にも敏感ですし、化粧道具だって順番に入れて並べて出せば、間違えません。また、鍼灸の仕事をしている人たちは衛生観念がしっかりしているので、前後の消毒なども必ずします」
後編では、ブラインドメイクの社会的な効果や、訓練士育成について伺います。

当記事は、取材時(2020年11月)の情報をもとに作成・公開されたものです。
再掲にあたり一部株式会社QLifeにて再編集しております。

大石華法(おおいし・かほう)さん

2010年に、日本ケアメイク協会を立ち上げ、同年に一般社団法人日本ケアメイク協会を設立。2020年2月より公益社団法人化粧療法協会、その後内閣府より認可を受け、公益社団法人国際化粧療法協会として医療、福祉、美容に貢献する活動を続けている。

公益社団法人国際化粧療法協会
https://caremake.or.jp/


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