【医師からのメッセージ】加齢黄斑変性の治療継続は患者さん自身の理解が鍵

北海道で、地域に密着した診療を続けておられる医療法人泰睛会 ひきち眼科院長の引地泰一先生。ミルエルの質問コーナーでも、患者さんに寄り添った回答をお寄せくださっています。今回は引地先生に、経過観察を含めた加齢黄斑変性の治療と、患者さんが治療を継続するためのモチベーション維持についてお伺いしました。

引地泰一

引地泰一(ひきち たいいち)先生
医療法人泰睛会 ひきち眼科 理事長・院長
医学博士。日本眼科学会眼科専門医、光線力学的療法認定医、旭川医科大学眼科講師。
旭川医科大学医学部卒業後、北見赤十字病院、釧路赤十字病院、ハーバード大学スケペンス眼研究所留学を経て、札幌厚生病院主任医長、大塚眼科病院副院長を経て、2016年にひきち眼科開院、院長に就任。2018年に医療法人 泰睛会 ひきち眼科 理事長・院長に就任。


――今まで多くの加齢黄斑変性患者さんを診て来られた先生が、広く一般の方にお伝えしたいことは何でしょうか。

加齢黄斑変性に限らず、黄斑疾患に共通の傾向ですが、かなり病状が進行していても両眼で物を見ていると、病気に気がつかないことが多いようです。高齢になったら、年に1~2回は眼科で検診を受けていただくこと、時折、片目をふさいで見え方に変化がないかを片目ずつ自己チェックしていただくことをお勧めします。

――やはり早期発見は大切なのですね。

病状の進行が軽い時期に治療を開始することが、治療後の良好な視機能への回復に繋がります。見え方に違和感を覚えたら、できるだけ早い眼科受診をお勧めします。ご家族の付き添いが必要な患者さんは、医療機関へ受診することについて、ご家族への遠慮があるかもしれません。しかし、目が見えにくくなり日常生活に手助けが必要になったり、日常生活活動の低下から認知機能の低下を招く1)ようなことがあったりすれば、かえって家族への負担が増すことにもなります。繰り返しになりますが、見え方に違和感を覚えたら、できるだけ早い眼科受診をお願いします。

――その一方で、加齢黄斑変性では、定期的な通院を行っていても、自己判断で通院を中断してしまうケースも多いと聞きます。

加齢黄斑変性における治療中断の最大の理由は、治療効果が実感できないことだと考えています。当院では、視力検査やOCT検査の結果などを患者さんと共有し、視機能改善が実感できない患者さんに対しては黄斑所見の改善・安定が得られていることを説明することで、治療を続けようと思っていただけるように工夫しています。また、ご同伴されているご家族に説明することも、患者さん自身による治療中断を予防することにつながっていると思います。

――病気と自分の症状についての理解が、治療継続に関わってくるのですね。具体的にはふだんどのようにご説明されているのでしょうか。

治療開始時に、加齢黄斑変性は治療の終了がなく、眼科とは生涯お付き合いいただく必要のある疾患・治療であることをお伝えしています。また、再診時にも繰り返し、同様の主旨の説明をしています。

具体的には、

  • 治療の開始が遅れると、治療を行なっても意義のある視機能に回復しないこと
  • 導入期で改善した視機能の維持には治療の継続が必要なこと
  • 治療中断で多くの患者が再発すること
  • その後に治療を再開しても、再発以前の視機能に戻らないこと

などです。また、治療への反応状況に応じて、治療間隔の延長や短縮を行い、できるだけ治療回数や通院回数を減らし、かつ視機能が維持できるような治療戦略をたて、負担軽減に努めることも併せて説明します。

しかし、繰り返し説明しても患者さんの理解・同意を得るのが難しい場合があります。そのときは、ご家族にもご来院いただいて病状や治療について情報を共有し、ご協力いただくようにしています。

――治療法の選択基準や、変更を考えるケースについて教えてください。

年齢や全身状態、居住地等を考慮し、薬剤を選んでいます。最近は薬効が長続きする薬剤が登場しており、治療回数や通院回数の減少に繋がることを期待しています。
投与中の薬剤で得られる効果が減弱している、または治療間隔が短縮傾向にある場合は、患者さんと相談のうえ、薬剤の変更などを行います。

――最後に、先生がミルエルのような患者さん・ご家族へのサポートサービスに期待することは何でしょうか。

同様の疾患で闘病中の患者さんがたくさんおられることや、そうした方々が同じ悩みや不安を抱えていることを知ることは、心の支えや治療継続のモチベーションになると思います。

――治療継続のための貴重なアドバイスをたくさんいただき、本日はありがとうございました。

※ご自身の治療・症状については、主治医の先生にご相談ください。

参考

  • Ogawa M, et al. PLoS One 2018; 13(5): e0197466

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