【医師からのメッセージ】ご自身のよりよい加齢黄斑変性の治療のために、医師の知識や経験を活用するコミュニケーションを

加齢黄斑変性と診断された後も、病気についてよく分からない、治療が怖い…などの不安を感じている人は少なくありません。

今回は「ミルエル」の質問箱コーナーにて皆さまからの質問にご回答くださっている加齢黄斑変性を含む網膜黄斑疾患を専門とする眼科専門医の山本 亜希子先生に、加齢黄斑変性治療における医師とのコミュニケーションや、ミルエルの活用について伺いました。

山本亜希子

山本 亜希子(やまもと あきこ)先生
医療法人社団インフィニティメディカル武蔵野眼科/杏林大学医学部付属病院杏林アイセンター
眼科専門医、PDT認定医、医学博士。東京女子医科大学を卒業後、杏林大学眼科学教室に入局。専門は加齢黄斑変性を含む網膜黄斑疾患。日本眼科学会、日本網膜硝子体学会、日本眼循環学会所属。


――加齢黄斑変性を早期発見・治療するためにはどうすればいいでしょうか。

加齢黄斑変性の症状は、なかなかご自身で気づきにくいものです。「自覚症状はいつからありますか?」とお伺いして明確に答えられる方は多くありません。ですから、50歳以降は少なくとも年に1回は眼科健診を受けてほしいです。視力検査だけでは小さい変化が発見できない場合もありますから、できれば眼底写真ができる健診が望ましいです。

眼科健診で要検査・要医療と判定されたら、まずはお近くの眼科クリニックへ行きましょう。加齢黄斑変性が心配な場合は、できれば病院のホームページ等を確認して、加齢黄斑変性の治療をしている旨の記載があるところを選ぶといいですよ。

――自分に合った病院や医師を選ぶにはどうすればよいですか?

「この病院・医師にかかれば正解」という答えはないと思います。患者さんご自身の治療に対する考え方や、家族など支援者の有無、医師との相性、交通アクセスのよさなどによって合う病院は異なるので、ご自身が重視するポイントを見据え、そこから決定されることが大切だと考えています。

――加齢黄斑変性の治療のゴールについてどのようにお考えですか?

「その患者さんが不自由なく生活できる視力を維持すること」がゴールだと考えています。

最初は「治療したら元の見え方に戻る」という期待をお持ちの方が多いのですが、実際はそうではなく「今の視力・視野を維持できたら大成功」です。治療しなければ視力は維持できませんし、ほぼ失明状態に陥ることもありますから「今の視力・視野を保って、今できていることを今後もし続けたいですね」とお話ししています。

不自由だと思うレベルは人それぞれですので、趣味や生きがいなどを教えていただけると、医師としてもゴール設定をしやすいです。

――治療のゴール設定に関して、これまでの患者さんの事例を教えていただけますか?

例えば、カメラが趣味で毎年山に行っている90歳台の男性は、できる限り積極的に治療をしています。また、本が読めなくなったら困る、細かい手芸が好きなどの希望がある方は、少しでも進行を抑えられるよう、できるだけ治療をレベルアップしたり、新薬が出たときに早めに提案したりしています。

一方で、散歩ができたらいい、音楽が聞けたらいい、家の中で食事ができればいい…というように、視力の維持に強いこだわりを持たない方もいらっしゃるので、患者さん個別の希望に合わせて、治療内容を提案します。

――加齢黄斑変性の治療に前向きになれない患者さんに対してはどう対応されていますか?

ご本人に納得いただけない場合は、ご家族に来ていただいてお話をします。治療にはお金がかかりますし、何を目指してどんな治療をするのか、ご家族で共有された方がいいという考えからです。また、目が見えなくなるとご家族にも介助・介護の負担がかかるという点も説明します。
ご家族が「治療したくないと言うけれど、家では見えないとよく言っているじゃない」「費用が気になるなら援助するよ」などと後押ししてくださることもあります。

とはいえ、治療を受けるかどうかを決めるのは患者さんの権利です。どうしても治療したくないならば、その考えを受け入れます。ただし、先々「こんなはずじゃなかった。自分だけは大丈夫だと思っていた」などと後悔しないことは、強く約束してもらっています。

また、私の説明がうまくないのかもしれないから、大学病院でもう一度話を聞いてみませんかと提案することもあります。他の先生の説明で納得していただけるなら、喜んでご紹介します。

――患者さんが医師としっかりお話しできることが大切ですね。

「先生が怖いから」といった理由で治療を続けられなくなるのは、もったいないです。質問すると怒ったり、真摯に向き合ってくれない先生、紹介状をお願いしたときに不機嫌になったり、拒否したりする先生なら不信感を持っていいと思います。その場合は他の先生を探すのも一手です。

加齢黄斑変性を専門にしている医師なら「どこの病院でもよいので治療を続けてほしい」と思うはずです。

また、医師だけでなくメディカルスタッフ(看護師、視能訓練士、事務員など)からの支援も重要です。不安や緊張、恐怖を感じているときは、それを自分の中に閉じ込めておかず、話しやすい人に相談してください。

私は、患者さんも医師もメディカルスタッフも横並びの立場で、同じチームのメンバー同士だと思っています。患者さんには「自分を治すチームに所属している」と捉えてほしいです。お医者さんは偉い人だから話しかけたりしたら失礼だ…などと思わずに、自分の身体をよくするために私たちの知識や経験を使ってください。

治療するかしないか、どの薬剤にするか、どれくらい続けるのか、どこにゴールを置くかを含めて、選び取るための情報はすべて医師から引き出してください。自分の意思を素直に出していただければ、主治医は「この人はこういう考えなんだ」と知ることができ、それに沿った治療やケアを考えることができます。

――実際に薬剤選択に際しては患者さんとどのような話をされていますか?

加齢黄斑変性で用いる抗VEGF薬は高価なので、まず使用可能なすべての薬剤の特徴と費用を説明します。その上で、その患者さんの症状を踏まえておすすめの薬剤を示しながら、患者さん本人に選んでいただいています。実際に何回か使ってみて、思ったように効いていない場合は、他の薬剤への変更を提案します。

正直、このように説明していると時間がかかりますし、その場で決められなくて次回また相談するという患者さんもいらっしゃいます。それでも、加齢黄斑変性を自分のこととして受け止めて、ちゃんと知って、納得して治療を続けてもらうことを一番大切にしたいので、時間をかけてもここは重点的に行っています。

――治療を継続することも大切ですよね。そのモチベーションを維持するために工夫されていることはありますか?

視力の変化のみならず、光干渉断層計(OCT)検査画像の変化をお見せするようにしています。両目で見ているとご自身では治療による変化を実感しにくいかもしれませんが、OCT画像であれば、黄斑部の出血やむくみの改善を治療前と比較して客観的に示すことができます。こうやって、これまでの頑張りの成果をお伝えします。

また、家でもアムスラーチャートを見るようにお願いしています。今は3~4か月に1回など長い間隔で通院する方が増えてきているので、その間にもう片方の目も発症したり、突然再発したりすることがあります。週に1回でもいいので、アムスラーチャートでのチェックをおすすめします。

――最後に、加齢黄斑変性を専門とする眼科医の立場から、ミルエルを患者さんが利用するメリットを教えてください。

加齢黄斑変性の治療を始めたときは、その後どうなっていくのか、いくら医師から説明されても想像がつきにくいと思います。ミルエルで先輩患者さんの「治療を続けたらこんなことができるようになった」「こういう状態で維持できています」といった声が聞けると、不安が解消できたり、前向きになれたりしますよね。病院の待合室のように、気軽に患者さん同士が情報を共有できる場として活用していただければと思います。

やはり患者さんは病気に対してとても不安だと思います。病気について知らないと、不安が募るだけではなく、通院を躊躇することでその後の経過が悪くなる場合もあるので、患者さんができるだけ積極的に情報を集めて、病気を理解して診療に臨んでいただくことが私たち眼科医の願いです。

――ありがとうございます。ミルエルがその一助となれば幸いです。

無料会員登録をすると
以下の機能をご利用いただけます

  • 通院の記録と調子の記録
  • 質問と回答の閲覧・投稿
  • 体験談の閲覧・投稿

質問・体験談でほかの患者さんと情報交換できる!
登録はかんたん!2ステップ。1分で完了します。

その他の記事

眼の手術を不安に感じる患者さんへのアドバイス ~信頼関係が不...

お化粧は、社会参加するための武器になる(後編)~「ブラインド...

お化粧は、社会参加するための武器になる(前編)~「ブラインド...