加齢黄斑変性の悩み・不安…仲間と話せる患者会とは?

自分がよく知らない病気だと診断されたとき、多くの人は不安になるでしょう。加齢黄斑変性のような、日常生活に影響のある感覚器の病気の場合はなおさらです。
これまでのような生活が送れるのか、どうしたら目がこれ以上悪くならないようにできるのか、くらしの不便をどのように解消すればいいのか……疑問や悩みは尽きません。

しかし、ひとりで悩み続けてしまうと、心や目以外の体の部分にも影響が出てきてしまいかねません。そんな悩みや不安を解消できる、ひとつのきっかけが患者会です。同じ病気を持つ仲間に、具体的かつ有益なアドバイスをもらったり、情報交換ができたりというメリットがあります。

今回は関東を中心に活動する患者会「加齢黄斑変性友の会」の代表世話人である高橋英夫さんと、会員である長南和子さん、山野一彦さんにお話を伺いました。

加齢黄斑変性に悩む人々が集まり、不安や疑問を解消する場を提供

加齢黄斑変性友の会は2012年に発足した団体です。高橋さんは世話人のひとりとして発足に関わり、現在は代表世話人を務めています。

高橋さん

「加齢黄斑変性友の会は、加齢黄斑変性をはじめとするさまざまな網膜疾患に悩む人々が集まり、仲間を得て不安や疑問を解消する場です」
「悩んでいるなら、気楽に参加してほしいです」
「体験談や相談を通じ他の人と交流することで、悩んでいた人がスッキリした顔になってお帰りになることは実際によくあります」
「最近はスマホなどの端末機器を活用した、視覚のハンディをカバーする便利なアプリケーションの情報を会員同士で交換するなど、積極的な動きもあります」

定例会の様子 定例会の様子

加齢黄斑変性友の会では、定例会を基本的に年に2回、開催しています。これは2時間ほどの会で、眼科医や視能訓練士などの専門家の講義を受けたり、参加者同士で情報交換をしたりしています。その内容は後日ニュースレター「友の会だより」としてまとめられ、会員に配布されています。
また、定例会以外では原則として定例会開催以外の月に少人数で開催される「たまち会」もあり、気軽な対話の会として好評のようです。


60歳のときに加齢黄斑変性(右目、滲出型)と診断された長南さんは、「すぐに目が見えなくなってしまうのでは」と心配だったそうです。家族や周囲の人からは病気についてなかなか理解してもらえず、ひとりで悩んでいたところ、スマホで加齢黄斑変性友の会を見つけました。

長南さん

「思い切って、代表世話人の高橋さんに電話してみました」
「同じ立場の仲間と情報共有することで、心が楽になりました」
「私の症状は比較的軽い方であることがわかりました」
「会員はやさしい人ばかりで、緊張しませんし、気を遣わずに話せます」
「来る者は拒まず、去る者は追わずという雰囲気で、遅刻も欠席も自由です」

山野さんは70歳のときに加齢黄斑変性(右目、滲出型)と診断されました。右目はほとんど視力がなく、手元の遠近感はつかみにくいものの、左目が正常なので日常の動作には支障はないそうです。
主治医を通じたつながりがあり、加齢黄斑変性友の会の発足時から参加しています。

山野さん

「前からいる会員から、新たに参加した会員へと経験を伝えています」
「メリットとして、例えば『法の改定によって、身体障害者手帳未所有者でも病状、内容により眼鏡などの補装具の補助が受けられるようになった』などの情報が得られることなどがあります」
「人間には雑談したいという欲求があると思います。目が悪いならなおさらでしょう。情報収集だけでなくお話もすることで、多くの方に晴れやかになってほしいです」
「目が悪くなると、他人とのつながりが少なくなり、引きこもりになりがちです。外出の機会や社会的なつながりを持てるようにしたいですね」

新型コロナウイルス感染症が流行し始めてからは、対面で集まることが難しくなってきたため、「Zoom」を利用しオンラインでつながる機会を持つようになりました。とはいえ、高橋さんによると、会員の半数程度にインターネットを使える環境があるものの、オンラインでの集まりには消極的な会員も多く、今後の課題だそうです。

山野さん

「会員のなかには外出するのが厳しい人もいますので、インターネットでつながることには価値があると思います」
「ネット機器を持っていても、オンラインで話すなんて難しい・できないと決めつけている『食わず嫌い』の方もいます。初回だけでも手伝ってあげれば、できるようになるはずです」

長南さんも、対面はもちろんオンラインでの会もできるだけ参加するようにしています。新しい会員のために同じ話の繰り返しになってしまうこともありますが、そのなかで何かひとつでもためになることがあれば十分だという気持ちで臨んでいるそうです。
また、加齢黄斑変性友の会では、食事会、旅行や花見などのイベントも不定期に企画・実行しています。長南さんは加齢黄斑変性の仲間と一緒に京都旅行に行ってきたそうです。

長南さん

「京都出身の方の案内で、加齢黄斑変性の研究施設を見学し、観光を楽しみました」
「今後も食事会や旅行を楽しみたいです!そのためにも仕事を続けたいです」
「今後できなくなることがあるからこそ、今できることにはアクティブに取り組みたいです」

※新型コロナウイルス感染防止のため、2020年1月より定例会・たまち会は中止中。代わりに印刷媒体による情報提供や一部オンラインによる対話等を実施しており、5月より毎月の最終金曜日にオンライン会合「Zoomたまち会」を正式開始予定。

加齢黄斑変性の患者会に参加するには

2021年2月現在、加齢黄斑変性友の会には114人が参加しています。
加齢黄斑変性友の会に連絡をすると、希望に応じて高橋さんら世話人が会の説明をしてくれます。電話はもちろん「Zoom」でも可能です。抱えている悩みを相談してから、あるいは会を見学してから入会するかどうか決めてもいいそうです。

高橋さん

「加齢黄斑変性友の会の目的は、会員数を増やすことではありません」
「入会後、悩みが解決し、更新をせず退会する方もいらっしゃいますが、私は友の会が少しでも役立ったのであれば、全く問題ないと考えています。

長南さん

「もし知り合いに加齢黄斑変性の方がいたら、加齢黄斑変性友の会があることや、そこでの体験を伝えたいです」
「ぜひ一度、会を見学して、どんな雰囲気かを確認してほしいです」

また、必要に応じて、相談相手の紹介もしています。

山野さん

「会員それぞれ、置かれている環境や症状の重さはさまざまですから、自分に近しい状況にいる人の話を聞きたいですよね」
「加齢黄斑変性友の会では会員の体験談集を発行してあり、会員相互の情報交換に役立ててもらっています。世話人は希望に応じ、そこから適切な方を紹介してくれます」
「ただ、残念なのは、こういう会があるということ自体を知っていただく機会というのがなかなかないことです。まず知っていただくことがとても大切だと思っています」

加齢黄斑変性友の会は加齢黄斑変性ほか、さまざまな網膜疾患に悩む人々が集まり、仲間を得て不安や疑問を解消する場です。もし、お悩みがある場合は、連絡を取ってみてはいかがでしょうか。ご本人はもちろん、ご家族からの相談も受け付けています。

◆加齢黄斑変性友の会

公式サイト:https://sites.google.com/site/amdtomonokai/
問い合わせ先:代表世話人 高橋英夫
代表電話:090-4513-6002

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