提供:ノバルティス ファーマ株式会社
本座談会で参加者から語られた内容は個人の体験や感想であり、病気の経過は個人によって異なります。ご自身の症状については自己判断を避け、必ず医療機関での診察を受けていただくようお願いいたします
加齢黄斑変性は、視力低下や視界のゆがみなどが生じる眼の病気です。そのうち「新生血管型加齢黄斑変性」では、抗VEGF薬を目に注射する「抗VEGF療法」がその治療の主流となっています。今回は抗VEGF療法を経験された新生血管型加齢黄斑変性当事者の方々にお集まりいただき、注射治療の実際や生活面での工夫についてお話を伺いました。
前編では、注射治療を受けた実感や感想、医師・医療者とのコミュニケーションについて、率直な気持ちをお話しいただきました。
ご参加いただいた方々
【加齢黄斑変性の発症~治療~現状(眼の説明は発症順)】
Aさん
女性、60代後半
(左眼)
発症:2022年夏、帰省中に昔のアルバムを見ていた際に見えにくさに気づく
治療:抗VEGF療法を継続している
現状:視野の右下がよく見えない
(右眼)
発症:2023年年末に発症
治療:抗VEGF療法を継続している
現状:進行が早いと感じている。注射をすれば、一定期間変視(視界のゆがみ)は改善する
【備考】
・重い変視あり。症状が強いときは線や字だけではなく、人の顔など、視界にあるもの全てがゆがんでしまい、眼を開けていることもつらいときがある
・既に白内障手術を受けている
Bさん
女性、80代後半
(右眼)
発症:2012年、視界のゆがみを感じ発症
治療:2017年まで、半年に一度の経過観察。治療の機会を与えられなかった
現状:ほとんど見えていない
(左眼)
発症:2017年、転院時に右眼とともに検査したところ発症が確認される
治療:抗VEGF療法を受けている(これまでに40回ほど)
現状:矯正視力で0.5を保っている
【備考】
・既に白内障手術を受けている
Cさん
女性、70代前半
(左眼のみ)
発症:2023年の年末、夜中に突然視界が真っ暗になり、発症
治療:発症した次の日に受診し、黄斑からの出血と加齢黄斑変性の暫定診断を受けた。出血に対しては血腫移動術※を行い、抗VEGF療法を1回受けた
現状:視界の1/4程度に黒い影がある。日によって見え方が異なる。視界のゆがみは軽いものの、視界のぼやけは少し重い
【備考】
・眼科での検査後2か月で発症した。もう片方の眼もいつ発症するか分からないため、加齢黄斑変性という病気自体が怖い
・運転免許は返納済み
・元々好きだった裁縫や編み物はできないままでいる
Dさん
男性、60代後半
(右眼のみ)
発症:2024年3月に発症。中央がゆがんだり、黒く見えたりする症状で気づく
治療:抗VEGF療法を3回受けた
現状:横の線や字がゆがんで見える。見えにくい部分は発症していない左眼で確認
【備考】
・今までに罹患した病気は治療で改善しており、眼の検査も受けていたが、突然発症した
・仕事は、強い眼精疲労を伴うが、発症前同様に行うことができている
・映画やテレビ番組などは、眼が疲れるため1時間程度見るのが限界
※ミニコラム:血腫移動術
Cさんは、黄斑からの出血後に血腫移動術を受けられました。この治療は、血の塊(血腫)を視界の中心部に関係する黄斑からずらすことで、一部は見えなくとも視界の中心部が見えるようにする手術のことです1)。一部の加齢黄斑変性患者さんが対象になります。
- 澤田浩作ほか. 日眼会誌 2007; 112(4): 382-388
Part 1:抗VEGF療法を受けた感想
●注射を受けた感想
Aさん | 注射時は、少なからず不安や心配、恐怖を感じる |
Bさん | |
Cさん | |
Dさん |
Aさん 治射には慣れてきましたが、それでも注入直前は心臓が強く脈打ちます。注射液が目の中に広がっていく景色は、気持ちの良いものではありません。
Bさん 私も「心臓などに影響が出るのではないか…」と不安になるくらい、心拍が速まります。ただ、医師からは「(心拍が速くなっても)身体に悪影響はない」と聞きました。
Aさん 治療直後の視界に黒い水玉が現れたとき、「これは何…?」と驚いたこともありました。
Cさん 私も経験しました。視界の下の方に、何かがぶら下がっている感じでした。
Bさん 注射の後に下を向いたら、小さな黒い粒がたくさん、ブワーっと見えました。これは空気で、時間が経つとなくなるとのことですが、最初は驚いてしまいます。
Dさん 眼に直接注射すると聞いたら、誰でも怖いですよね。麻酔を使うので痛くはないのですが、何回経験しても慣れません。
Bさん 注射は緊張しますが、一方で「これしかない」という気持ちもあります。あるとき、治療している左眼の矯正視力がストレスから一時的に0.2~0.3に落ちたことがあります。右眼はほぼ見えませんから些細なことすらままならず、人生が“真っ暗”になった気分でした。
Part 2:医師・医療者とのコミュニケーション
●治療選択:医師から患者さんへの説明
Aさん | ほかの薬剤の提案をされた。医師の説明には納得 |
Bさん | 最初に発症した右眼は治療されず今はほぼ見えない |
Cさん | 緊急度が高く選べる状況になかった |
Dさん | 特にストレスなく診療~説明を受けた |
Aさん これまで、左眼の再発などで2回ほどほかの薬剤の提案を受けました。右眼もこれまでに注射薬を変更しました。医師からの説明には納得しています。
Bさん 私の場合、最初に発症した右眼は注射治療の提示がなされず、ほとんど見えなくなってしまいました。
Cさん 医師から治療の説明を受けましたが、出血して緊急度が高かったので治療を選べる状況ではなかったです。
Dさん 私は最初の医療機関から、すぐに別の病院を紹介されました。「この病気だと、こういう診療の流れなのかな」と思いつつ検査を受け、医師から説明を受けました。「まず今の病院で治療し、満足いかない場合は別を考える」といった心持ちでいます。
ただ、「完治はせず継続的な治療が必要」だと聞いた時、自身をどのように納得させればよいのか悩みました。今はできるだけ前向きに治療しようと思い直しています。
●治療選択:患者さんから医師への質問
Aさん | 光線力学的療法(PDT)について質問 |
Bさん | 新しい注射薬とPDTについて質問 |
Cさん | 分からないことは積極的に質問 |
Bさん 加齢黄斑変性に対する新しい注射薬は続々と登場しています。そこで、主治医に「薬の種類を変更すれば、投与間隔が延びるのではないか」と伺ったことがありました。以前は「該当の薬剤は導入していない」という答えでしたが、最近「今までの注射は効いていると思う。今の注射が効かなくなったときのために、ほかの薬は取っておきたい」と説明され、納得できました。
Aさん 私はPDTについて、PDT認定医でもある主治医にお尋ねしたことがあります。しかし、私のケースについてはリスク面を重視され、勧めるようなコメントはありませんでした。
Bさん 私もPDTについて医師に伺ったところ、「当院では行っていないため、他院を紹介します」とのことでした。私は右眼がほぼ見えないため、PDTが失敗した場合のことを考えると、一歩を踏み出せずにいます。
Cさん 私には他の病気もあります。自分の体を知る意味でも、自身が納得するためにも、分からないことは迷わず医師・医療者に聞くようにしています。
●医師へ伝えている希望
Aさん | 希望は、医師に伝えられている |
Bさん | |
Cさん | |
Dさん |
Aさん 私は、自分の眼で日常生活がある程度こなせることを目標にしています。医師には「活動的な生活を希望している」と伝えています。具体的な話はしていないのですが。
Bさん 私の希望は、今の生活の維持です。ボランティア活動に加えて、年に1度の講演を続けています。これらを続けるために、「文字が読みたい」と伝えています。
Cさん 右眼の発症予防を含め、「これ以上悪くならないようにしたい」希望は伝えています。
Dさん 私の一番の希望は、仕事の継続です。今のところこなせていますし、勤務時間も発症前から変わっていません。医師からも「今まで通りで大丈夫」とお墨付きをいただいたので、自信をもって仕事に打ち込んでいます。
●医師に伝えられずにいること
Aさん | 生活上のスケジュール調整のしにくさ |
Bさん | 治療スケジュールの変更希望 |
Dさん | 投与スケジュールが固定されることへの不安 |
Aさん 医師には伝えていないのですが、実は海外への一人旅が好きで、可能な限り行きたいと思っています。ただ、両眼の治療が続いて、先々のスケジュールが立てにくくなっています。旅行や友人との面会にも制限が出てきており、つらいですね。ただ、このつらさも医師に伝えていません。
Bさん スケジュールに関して、私は注射の投与間隔についての希望を今まで伝えきれていませんでした。私の場合、注射治療後に3か月後の受診日(次に注射を打つ日)を決められています。一旦3か月後と定められると、言い出しにくい雰囲気が漂います。「友の会」などでは、検査をしてから注射のタイミングを決める方法もある、という話も聞きます。
Dさん 「悪くなったから投与する」なら分かるのですが、投与間隔が決められてしまうのは困るかもしれません。投与間隔を固定して続けられても、いつ悪くなったのか医療側・患者側の双方で把握していないと、どのような意図で治療しているのか分からなくなりそうです。
Bさん そこで、「先生、私は注射直前の眼がどうなっているか知りたい」と伝えたところ、主治医も了解くださり、治療当日にOCT検査をしてから注射することになりました。画像をもらい、眼の状態を把握しながら治療を進めたいと思っています。
あと、私は文字を読めるようにすることが希望なので、近くがどの程度見えているのか分かる検査があるかどうか、先生に聞いてみたいですね。
Dさん 今のお話を参考に、少しずつでもいいので、投与間隔などの治療方針を自身でも把握することが大切だと思いました。
Aさん ただ、私のように再発や両眼発症が起き、治療経過が順調ではないケースではスケジュールが変わります。私は失明を避けたいので、治療が最優先になります。治療方針を定めるのは、意外に簡単ではないかもしれません。
実は先日、両眼発症前にチケットを予約していた海外旅行に行ってきたのですが、両眼発症で旅行を止められるかもしれないと思い、医師には旅行のことを伝えませんでした。
【後編へ続く】
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