【ミルエル患者座談会】後編 注射治療の感想と医師・医療者とのコミュニケーション

提供:ノバルティス ファーマ株式会社

本座談会で参加者から語られた内容は個人の体験や感想であり、病気の経過は個人によって異なります。ご自身の症状については自己判断を避け、必ず医療機関での診察を受けていただくようお願いいたします

加齢黄斑変性は、視力低下や視界のゆがみなどが生じる眼の病気です。そのうち「新生血管型加齢黄斑変性」では、抗VEGF薬を目に注射する「抗VEGF療法」がその治療の主流となっています。今回は抗VEGF療法を経験された新生血管型加齢黄斑変性当事者の方々にお集まりいただき、注射治療の実際や生活面での工夫についてお話を伺いました。
後編では、4名の方々からお聞きした生活面での工夫と、治療継続につながる各種制度の活用などについてご紹介します。

Part 3:生活面に関する情報収集・工夫

●ロービジョン・見え方への対応

Aさん ロービジョンや見え方については、患者会などでの情報が有用
医師・医療者からさらなる説明が得られるとうれしい
Bさん
Cさん

Aさん 私の場合は両眼の治療が必要で、医師と話す時間が限られますが、ロービジョンケアなど、生活上のサポートの情報をもう少しいただけるとありがたいです。

Cさん 私は視界のゆがみを改善したいと思っていて、医師に伝えたところ「眼の中の血や水が吸収されるまで、時間が必要かもしれない」、「悪いほうの眼が“悪さ”をしていると思う」との説明でした。ただ、“悪さ”の意味することがわからず、それ以上の質問は止めました。治療とは別方面の助言でも良いのですが、私たちの見え方が分かるわけではないのでアドバイスが難しいのかな、と思うようになりました。

Bさん 患者会『加齢黄斑変性友の会(以下、友の会)』に参加していると、会話の中から日常生活をより良く生きるヒントを聞けます。例えば、眼鏡やサングラスの選び方ですね。

Cさん 私が最初に作った眼鏡は、着用しているととても疲れる代物でした。『友の会』で三輪まり枝先生(視能訓練士;北里大学医療衛生学部客員准教授)に眼鏡について相談したところ「左右の度数のバランスを整えて」とアドバイスをいただき、作り直して着用したら疲れが軽減されました。見え方への対策は、『友の会』や同じ病気の方々のお話が役に立ちます。

●眼鏡・ルーペ

Aさん 眼鏡(老眼鏡)やルーペを、用途に応じて使い分ける
Bさん
Cさん
Dさん

Aさん 私は治療後に見え方が変わるので、眼鏡やルーペを使い分けます。眼鏡は遠くを見るときとPCなど近くを見るときで2つありますが、裸眼のほうが見やすいときもありますね。小さな文字を読むときに使うルーペは、100円ショップで買いました。

Cさん 私も、遠くを見る眼鏡と手元用の眼鏡の2種類を使い分けています。また、眼鏡を着けていても被せるように装着するルーペを使っています。エアコンのダストボックスの掃除もひとりでできました。

Bさん 私は、ライト付きの大きなルーペを使っています。海外製なのですが、倍率も大きく便利です。自立するルーペもあるようですね。

Dさん 眼鏡(老眼鏡)は数種類を使い分けています。今までに近い見え方になる眼鏡、視界全体がよく見える眼鏡などを持っています。ただ、眼鏡をかけ続けていると見え過ぎて眼精疲労を起こすので、疲れないように気を使います。

Cさん 通常の眼鏡店は加齢黄斑変性のことをあまりご存じではありません。単に視力を測って作ることになるため、しっくりこないこともあります。同じ病気の方々に気をつけていただきたい点です。

●摂取するもの:サプリメントと飲酒

Bさん サプリメント(特にルテイン)に興味あり
Cさん
Dさん 深酒を避けている

Bさん 仲間内で、ルテインなどのサプリメントの情報交換をしています。

Cさん ルテインにもさまざまな種類、含有量の製品がありますね。

Dさん 私は医師から深酒は避けるよう言われました。外食だと深酒しやすいので、“家飲み“に切り替え、適度に嗜んでいます。

●その他、皆さんから伺った困りごとへの対処法

生活全般

困りごと 対処法
小銭を数えるのが大変 キャッシュレス決済を活用
詰め替え用の液体洗剤をうまく移し替えられない 本体容器に入った洗剤を買う
硬い野菜(かぼちゃなど)が うまく切れない
※Bさんは大ケガをした経験あり
電子レンジを使って柔らかくしてから切る
まな板と食材が区別しにくい まな板の色が黒だと、食材を視認しやすい
※ご飯を入れる茶碗も黒くすると、白米が見やすくなる

移動

困りごと 対処法
駅にある運賃表や看板が見えない ・キャッシュレス決済を活用
・駅員や近くにいる人に聞く
エスカレーターに乗りづらい なるべくエレベーターを使う

見る・読む

困りごと 対処法
PC・スマホ画面の文字が読みにくい ・文字サイズを大きくする機能を使う
・背景や文字の色を工夫する:背景が黒色、文字が白色や黄色だと視認しやすい
・拡大読書器を使う
(背景や文字の色を変えることもできる)
小説が読みにくい 音声読み上げアプリを活用する
テレビや時計が見にくい スマートフォン/スピーカーを活用する: 「今日の天気は?」、「今何時?」と質問すれば答えてくれる

Part 4:治療を続けるために

●障害年金・高額療養費制度・障害者総合支援法

Aさん 以前は付加給付制度を、現在は高額療養費制度を活用
Bさん 高額療養費制度、障害者総合支援法を活用
Cさん 高額療養費制度を活用
Dさん 高額療養費制度の対象外

Aさん 左眼のみ治療していた期間は、後発品だったので医療費が抑えられていました。また、当時加入していた健康保険では独自の付加給付制度があったため、月の上限を超えた分の差額の支給がありました。今は国民健康保険に加入していますが、両眼の治療を始めて医療費が上がったため、高額療養費制度を活用しています。とても助かっています。

Dさん 私の場合、他に大きな病気をしていないこともあり、高額療養費制度の対象外でした。

Bさん 私は他の治療も同じ月内に収めるようにして、高額療養費制度を利用しています。
また、障害者総合支援法に基づいた支援を受け、携帯型の拡大読書器を手に入れました。同法は障害者手帳がなくても利用できるのがポイントです。申請時に協力いただいた医師に拡大読書器を見せたところ「初めて見た」そうで、興味をもってくださいました。

Aさん 私も同法について区役所で一度確認してみましたが、適用とならない印象を受けました。同法を活用するかは決めかねています。

Cさん 私の眼の状態では、同法の条件に合わないように思っています。高額療養費制度は活用しています。

●治療経過中、精神面も健全に保つために

Aさん 「希望をもつ」、「好きなことを楽しむ」ことは、治療を続けるうえでも大切
Bさん
Cさん
Dさん

Cさん Aさんが海外旅行のお話をされていましたが(前編参照)、うらやましいですね。私も旅行が好きですし、裁縫や編み物も再びできるようになりたいです。見え方に慣れてきたら、チャレンジしたいと思っています。

Aさん 両眼に発症したときは旅行すべきか迷いましたが、暗いときには出歩かない、タクシーを利用する、特に段差に気をつけて移動する、といった対応がうまく行きました。そして、何よりも気分転換になりました。旅行好きの方であれば、症状が落ち着いているときを見計らってお出かけすると、精神的にも良いように思います。

Cさん 好きなことをしていると、いっときでも眼のことを忘れられますよね。私も、月に1回友人とカラオケに行ったり、スポーツジムでエアロビクスをしたりすると、そのときだけは加齢黄斑変性を忘れます。

Bさん 楽しいことをするって、大切です。実は、私も海外旅行に行きました。Dさんが仰っていた“家飲み”ですが、実は私も似たようなことをしています。

Dさん 休日に家に仲間を呼び、私が料理を振る舞って…楽しく過ごしています。

●読者の皆様へメッセージ

Aさん 希望をもつことが大切だと思います。効果の感じ方は人それぞれだと思いますが、希望があると前に進みやすいものです。
私は両眼に発症したとき、大きなショックを受けました。ただ、加齢黄斑変性は治療法がある病気ですから、制度などを活用しながら前向きに取り組みたいですね。

Bさん 私は、片眼を治療しないままほぼ見えない状態になりました。この悲しみはずっと心の中でくすぶっています。加齢黄斑変性は病名に“加齢”とつきますが、働き盛りの世代にも起こり得る病気です。加齢黄斑変性という病気を知っていただいて、「おかしい」と思ったら病院に行くことを多くの人に知ってほしいと思います。

Cさん 私のように突然発症することはありますが、周囲の人には「半年~1年に1度は、瞳孔を開いて眼底検査を受ける」、「アムスラーチャートで見え方が変だと思ったら検査する」ことをお勧めしています。
また、別の病気でお薬を飲んでいるときは、加齢黄斑変性との兼ね合いに注意が必要だと思います。私は血液をサラサラにするお薬(抗凝固薬)を別の病気で勧められたのですが、加齢黄斑変性があると眼内出血につながる可能性があるため1,2)、眼科医からは難色を示されました。ただ、抗凝固薬を飲んだほうが良い方もいると思いますので、眼科医・別の病気の主治医とよく話し合ってほしいです。

Dさん 加齢黄斑変性になったのは仕方ないことです。最近、そのことを受け止めて「みんな頑張っている」という情報を発信することも大事だと思うようになりました。
加齢黄斑変性は治らない病気、治療は眼内注射、と聞いたら、誰でも怖いはずです。だからこそ、私は発症してからの気持ちや現況をSNSで発信することで、同じ病気の人を元気づけたいと思います。

Bさん 最後に感謝したいのは、『友の会』などで会う、同じ病気を抱える仲間です。まさか80歳を過ぎて、加齢黄斑変性をきっかけに仲間が増えるとは思っていませんでした。今日お集まりいただいた皆さんのお話も、大変勉強になりました。
この内容が、同じ病気を抱える方々のより良い生活につながれば、大変うれしく思います。

  • Kiernan DF, et al. Retina 2010; 30(10): 1573-1578
  • Kuhli-Hattenbach C, et al. Am J Ophthalmol 2010; 149(2): 316-321. e1

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