提供:ノバルティス ファーマ株式会社
「やさしい手料理キッチン」は、同行援護従事者も務める調理師の武野桂(たけの かつら)さん、フードコーディネーター/食育アドバイザーの門馬志帆(もんま しほ)さんが運営する、視覚障害のある人のための料理教室です。
来月より「ミルエル」では、「やさしい手料理キッチン」とコラボし、レシピと調理のさまざまな工夫をお伝えしていきます。
「やさしい手料理キッチン」とは
3年前、代表の武野さんが「視覚障害を持つ人向けに、しっかり学べて楽しく料理できる場を提供したい」とはじめた料理教室です。一般的な料理教室では習熟度別のクラスが設置されていることがほとんどですが、「やさしい手料理キッチン」では、さまざまな視覚障害の程度や年数、料理の習熟度の生徒が一緒に学んでいます。年配の女性の参加者が多いこともあり、日常的に料理をしている人もいる一方で、包丁を持ったことがないという男性も参加しています。 「実際のところ、できることの差は、障害の程度よりも料理経験によると感じます。目標やニーズも、参加者によってさまざまです」と武野さんは話します。4人くらいまでの少人数制のため、参加者一人一人に合わせた、きめ細やかな対応が可能になっています。
教室で1回に作るのは、メイン、スープ、小鉢など3品ほど。料理を始める前に、設備やどのような作業があるのかなどの手順をあらかじめ参加者と確認します。難しい作業があるときは、リハーサルをすることもあります。例えば、太巻きを作ったときは、「巻き簾」の上にタオルを置き、巻いてみる練習をしました。
レシピを家でも再現するためのポイント「計量」
教室ではさまざまなことを指導しますが、武野さんが最もこだわっているのが「計量」です。
「計量ができれば、教室で作った料理を家でも再現しやすい」と武野さんは話します。
しかし、見える場合は簡単にできる計量も、視覚障害がある場合は難しいものです。小さじ2分の1といっても、調味料の量や目盛りが見えなければ正確な計量はできません。
そこで、できるだけ小さじ1杯、2杯といった計りやすい分量でレシピを考えています。また、一定の量だけを出すことができる調味料入れを使ったり、置いて使える計量スプーンを使ってみたり、さまざまなやり方を試しています。
「人差し指と親指でひとつまみ」「中指、人差し指、親指でひとつまみ」というような「手計り」は、視覚に頼らずに計量できるため、積極的にやり方を伝えています。
「何ができるかできないかは人によって異なるので、その方に一番やりやすい方法を見つけたいと思っています」(武野さん)。
レシピを何度も見ないで済むよう、調味料を語呂合わせにして覚えやすくしているのも特徴のひとつです。「照り焼きのソースは、砂糖(さ)、しょうゆ(し)、みりん(み)、酒(さ)をスプーン1杯ずつ入れると作れます。だから『さしみさ』と覚えてくださいね、と言ってみんなで復唱します」。
教室が開催できない間も、進化を続けていく
一般向けの料理教室の講師として11年もの間働いていた武野さんですが、「やさしい手料理キッチン」では、想定通りにいかないことが今でも起きるといいます。面取りの話をしたら、口々に「やってみたい」と言われ、想定していた時間を大幅に超え、1時間ほどみんなで面取りをしたことも。「そんなときはみんなで笑ってしまうのですが」と武野さんは笑顔で振り返ります。こうした経験を踏まえて、今は詰め込みすぎないように品数を減らしたり、作業量を減らしたりするなどの工夫をするようになりました。料理教室でやらなくてよいことはあえて省くときもあります。
「予定していた作業でも、表情を見ていて、これはやりたくないのだな、苦手なのだなと思ったものはやらずにほかの人に任せるなどしています。最初は自分で完璧に作れるようになることを目標にしていましたが、だんだん楽しんでいただくことにシフトしてきました」(武野さん)。
現在、新型コロナ感染症の影響で教室は残念ながら休止中ですが、ホームページでレシピ公開を続けています。また、新たに登場した便利グッズに感動することもあるそうです。「目が不自由な方にやりやすい調理法が伝えられているかというと、まだまだ工夫の余地があります。どう伝えたらいいか、今も試行錯誤しています」(武野さん)。
「ミルエル」でもレシピを紹介します
さて、「ミルエル」でも「やさしい手料理キッチン」協力のもと、視覚障害のある人が楽しめる・実践できるレシピの紹介をスタートします。
料理になじみがない方でもチャレンジしやすい、簡単でおいしいレシピとなっています。
また、教室でも取り入れている、ハンバーグや餃子のタネを簡単に扱う工夫(写真1)、刃物に抵抗がある参加者には、キッチンバサミを使った方法(写真2)、計量などについても調理をしやすくするための工夫を随所に取り入れています。「おうち時間」が長くなっている今、新しい趣味として取り組んでみてはいかがでしょうか。
レシピとともに、調理の際に便利なグッズも紹介していきます。目が見えにくい人の調理上の課題や必要な工夫について、患者さんご自身に知っていただくことはもちろん、ご家族や周りの人にも知っていただくことが、加齢黄斑変性をはじめとする視覚障害をもつ人たちにとってよりよい社会の実現につながる、と「ミルエル」は考えています。
第1回目のレシピは来週、その後は隔週で公開予定です。ぜひ楽しみにお待ちください。
武野桂(たけの かつら)
盲導犬センター職員ののち、大手クッキングスクールにて、11年間料理講師を勤める。その後独立、視覚障害のある人たち向けの料理教室を立ち上げる。
現在は同行援護従業者として活動しながら、やさしい手料理キッチンの運営を続けている。
門馬志帆(もんま しほ)
会社員として勤める傍ら、フードコーディネーターの資格を取得。栄養アドバイスやレシピ制作などの仕事を経て、料理講師として大手クッキングスクールに7年間勤務し、料理と和菓子の講師のほか、トレーナーとしても活躍。
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